百億の月

いま小さく脈打つメロディー

推しがすごすぎてくやしい

正確には推しがすごいことを言葉にできないことがくやしい。

備忘録です。多大なるネタバレ。


推しことももいろクローバーZ佐々木彩夏、通称あーりんは去る7月12日、ソロで配信ライブを行った。
元々その日は、横浜アリーナで毎年恒例のソロコンサートをする予定だった。今年で5回目になる。はずだった。
昨今の事情で本体のももクロのコンサートも軒並み延期、または中止になっていたので、期待してはいなかったけれど、それでもソロコン中止が決定したことは悲しかったしさみしかった。
ソロコンの名前は推しの敬愛する浜崎あゆみさんの所属するavexのイベント、a-nationをパ……オマージュしてAYAKANATIONと冠している。
しかし、今回の配信ライブのタイトルは「A-CHANNEL」。あーちゃんねる。
中止の決定のお知らせとともに配信ライブのお知らせを行ったけれど、彼女はそもそもAYAKANATIONと配信ライブを別のものとして考えているようだった。
それに伴い語られる、「配信だからこそ見せられるもの」への自負。
彼女のクリエイティブな部分には一定の信頼は置いていた。それは過去4回のソロコンで示されていたと感じるから。所詮配信だから、ある程度のものを見せてくれればいい。そう思っていた。
でもぶっちゃけ、そんな評価は我が推しを舐めていたと言わざるを得ないものを当日見せられた。

どう書いていいかわからないから全部書くよ。


オープニングは、先日発売されたばかりのあーりんの1stアルバム、「A-rin Assort」より「ハッピー♡スイート♡バースデー!」。

本来は彼女の誕生日にあわせた発売日ゆえのバースデーソング。
夢の国風のサウンドであーりんの世界は開幕した。してしまった。
曲の最後はなぜか3rd「AMRANTHUS」より「WE ARE BORN」の赤ちゃん衣装に変身する。

思わず口についた「なんでや!」という言葉。
けれどあとあとになればなるほどわかる。
この赤ちゃん衣装への早替え、というか変身はおそらく事前収録を繋いだものだ。配信だからできる本当の「変身」だった。

あーりんちゅあによるオープニング映像を挟んで、幼稚園児風の衣装に身を包んで歌う。
(※訂正。あーりんちゅあは冒頭でここは喜安氏による映像。記憶違い)
「ゴリラパンチ」「キューティーハニー」「私を選んで!花輪くん」「笑一笑」。
ここら辺でなぜ、赤ちゃん衣装を用いたのか、幼稚園児風の衣装になったのかがわかる。
上記の「AMRANTHUS」、人の生まれてから死ぬまでを描いたこのアルバムにおいて、「WE ARE BORN」は生まれる瞬間、「ゴリラパンチ」は幼少期にあたる歌だ。
つまり生まれ落ちてからの成長。衣装ひとつでそんなこと仕組んでくるか?
そして、「キューティーハニー」「私を選んで!花輪くん」と「笑一笑」はアニメソングからの選出。
なにより、ちびまる子ちゃんのキャラソンとも呼ぶべき「私を選んで!花輪くん」では、キャラクターたちと掛け合いをする。それを見事に画面上に表現していた。この部分を実際の現場でやろうとしても正直観客は置いてけぼりになってしまう。これも配信だからこそのギミック。
アニメ映像を使わせてくださったさくらプロダクションさん、ありがとうございます!!!

ふたたび場面転換、衣装替えが終わると、あーりんのソロの代表曲と言っても過言ではない、「だってあーりんなんだもーん☆」。
14歳のときのあーりんの歌。思春期に差し掛かったことがわかる。
このときのピンクのフリフリの衣装、死ぬほど似合ってるからまた着てほしい。
歌っているのが幼少期とは別の場所。特別にセッティングされた「だてあり」用のかわいいものに囲まれている。
次の「君が好きだと叫びたい」では会場備え付けのプールサイドに移動して歌う。
実はこの日、あーりんは横アリではなく都内某所(バレバレ)で彼女の国を展開している。(わたしも行ったことはあるけれど、)プールがあるなんて知らなかった。
そのまま、ポスターで飾られた廊下を進んで歌う「My Hamburger Boy」と「My Cherry Pie」。2017年のシングルだ。

チェリーパイの方では、CDジャケットを思い出すようなモノクロの市松模様のフロアでダンスする。
ここまで魅入っていて、ふと気づく。あーりんは都内某所(バレバレ)のすべてを会場として、この配信をやりきるつもりなのだ。
6月25日のももクロの配信ライブ、「Behind closed doors『2020 次が始まり』」でも、観客がいないことを逆手にとった演出があった。それの拡大版だ。
上記では「The Diamod Four」のMVを再現するような構成。それも見応えがあったけれど、彼女は1曲ではとどまらなかった。

映像を挟んでシンプルなセーラー服ではじまる「あーりんは反抗期!」。これもおそらく事前収録。
ド派手なセーラー服に変わり、迎える「反抗期」。やけにヤンキールックが堂に入る。
推しなんでなんでもかわいいです。
「Bunny Gone Bad」、「スイート・エイティーン・ブギ」と激しめのナンバーが続き、「あーりんはあーりん♡」でZoom中継から声援を受ける。
顔出しNGなので一生やりたくないけど、メンバーが楽しんでくれるなら悩んじゃう……。
AYAKANATIONでは「だてあり」「反抗期」「あーりんはあーりん」のあーりん三部作(勝手に呼んでいる)は本編ではやらず、アンコール部分の「あーりんパート(勝手に思っている)」に集約されているし、ラストソングは決まって「だてあり」だ。それを考えると、今回のA-CHANNELは完全にべつものとしてセットリストも構築してきていた。
なにより、彼女の成長とともに作られてきたこの三曲が、作られた順番で歌われたことに感動してしまう。

メインステージに移動し、カラフルな衣装から一転してモノクロのワンピースになった。「Memories,Stories」「Grenade」「空でも虹でも星でもない」と、三曲しっとり系が続く。
おそらくあーりんの大好きなあゆちゃん(浜崎あゆみ氏)リスペクトパートだ(これも勝手に言っている)。
半分ほど明るくした髪色がポニーテールによく映えていた。
スカートを脱ぎ捨ててラストスパート。
「Early SUMMER」「Girls Meeting」とフレッシュな曲で後腐れなく締められる。やっぱりあーりんのダンスすきだな。
アンコールは、「モノクロデッサン」がたった1曲だけ。
この曲は、五人で六色を歌ったうただ。
四人では歌わないだろうな、と思っていた曲だった。でも、あーりんソロなら関係がない。そんな盲点をついていた。
最後の最後で、あーりんはすべてを包んで、「ももクロのあーりん」をえらぶ。あの10周年の東京ドームで、あかりんと杏果の名前のほかに、辞めていった子たちの名前も呼んだあーりん。
それらを捨て置かず、ももクロのあーりんになる。なにより爽快だった。
それを毎年恒例になっている、手話で、伸びやかに歌う。きちんとAYAKANATIONも踏襲してくれていてうれしかった。
エンディングは、歌わなかった「Link Link」。2016年、はじめてのソロコンで彼女が泣いた曲。
「離れていても 想いは Link」。あーりんがこの曲で泣くことはもうないんだろうな。

あーりんが生まれてから、いまのあーりんになるまでのダイジェストを描いたようなステージ。
まさに「あーりんアソート」。あーりんの詰め合わせだった。
いろんな要素があって、佐々木彩夏ももクロのあーりんになっている。
「ぜんぶぎゅっとして自分なの」。
最初のソロコンで答えは出ていた。そんなことを思った。

途中途中挟まる、Zoomと連動している雑なMCが彼女がいま、リアルタイムにいるのだと証明していた。
それくらい、完璧な「映像作品」だった。
ほとんど生だということはわかっている。
けれど考えても、成長して安定感のある歌声と、奥行のある構成、上手く繋げられた事前収録映像でどれが「本物」なのか見ていてもわからなくなった。混乱する。
「配信だからこその演出」「ライブエンターテインメント」「リアル感」の詰め込まれたあーりんワールド。時間軸も場所も次元もめちゃくちゃにしているのに、美しく並んで整然とする様は、まさに配信ライブエンターテインメント呼ぶにふさわしかった。
かつて、大人たちが口々に彼女のアイデアを「あーりんの考えていることは点で見てもわからないけど、全体像を通して見れば答えがわかる」と評した。その集大成とも呼べるんじゃないか。
彼女の作り出した配信ライブエンターテインメントは、一遍の壮大な映画であり、それでいて血の通った一人舞台を見た気分になった。
ときどき見受ける歌いきれていない歌や、歌詞の覚えの甘い曲なんかもリアル感の「スパイス」じゃないか?とすら思えた。
なにより、彼女の頭の中を再現することを可能にした映像班もすごい。目まぐるしく「動く」ステージに、エフェクト、事前収録との繋ぎ。追いつくだけで精一杯だったろうに、寸分のズレもなかった。
元々ステージ演出がテレビ屋ということが大きかったろう。プールサイドのシーンは昭和や平成初期の歌番組のようだと、みんな笑う。その情感も「生」で出していた。
接続も問題なかった。GyaOさんに五体投地


ここまで書いても、まだ伝えられない。全体像なんて捉えても意味がないのだ。
「見ないとわからない」。それが拭えない。
これがくやしくてたまらない。
すごくてすごかった。
当日、この配信ライブのハッシュタグ(村上さん覚えたね!)は「#あーりんしか勝たん」だった。
正直、この手の○○しか勝たん系はそんなに好きじゃない……。けど考えたら、アイドル・あーりんを世界で一番理解して体現できるのはあーりん以外いない。あーりん界で佐々木彩夏は常に覇者なのだ。
そりゃ、あーりんしか勝たん。

配信ライブに4500円は正直高い。
でもそんなもの吹っ飛ぶものが見れた。見れる。

アーカイブは28日から。頼む、見てくれ。金なら出す。
二時間だけ、彼女に捧げてくれ。それを後悔させない。
いまだにA-CHANNELを思い出すと、泣きたくなる。いや、実際に今泣いている。
なぜならわたしはもう、戻れない。
推しを知らなかったあの日には戻れないように、あーりんが、新しい世界の扉を開く前の世界にはもう戻れないことを知っているから。

私的に、こんなバケモノみたいなものを見たあとで、ほかの配信ライブを見ることも不安になった。率直に楽しめるのだろうかと。まだif or…も関西アイランドもあるのに、果たして、と。
とはいえ、各々の選択なんだろうな、と思った。熱量のあるコンサートを、音楽番組さながらのステージを、緻密に計算されたオリジナルの舞台を、そのまま映像にのせるのも、間違ってはいないはずだ。
ただ、発信する側が、現場の下位互換と思っているものは、受け取る側も感じ取ってしまうだろう。そこに対面ではない不足を感じたら、どんなに好きな相手でも、冷めてしまう。その距離がある。
その隙を見せないアーティストが、このコロナ禍の配信時代は強いのだろうな。わたしはそれを期待している。彼らも彼女たちもアイドルだもの。

正解がわからない世界になってしまった。けれど、自分なりの「答え」は出せる。そういうステージを推しが作り出した。そのことを伝えられないことが歯がゆい。くやしい。
それでも言う。
あーりんしか勝たん!!!